はじめに
皆さんはグローブを小指2本入れで使用したことはありますか?
私は中学生のときに外野手のチームメイトが小指2本入れで使っているのを見て初めて知りました。
私自身、長年「小指2本入れ=外野手」のイメージを強く持っており、実戦で小指2本入れで守ってことはありませんでした。しかし、練習で小指2本入れを試したときには「結構掴めるなぁ」と感じていたことを覚えています。
今回、そんな私が内野で使用するグローブを小指2本入れ仕様で仕上げているため、なぜそうしようと思ったのか経緯などをお伝えできればと思います。
小指2本入れとは
そもそも小指2本入れとは、
- 小指の部分に小指と薬指の2本を入れる
- 薬指の部分に中指を入れる
- 中指の部分に人差し指を入れる(指を出すパターンもあり)
使い方のことです。
小指2本入れのメリット
小指2本入れのメリットとしては、「親指と小指で掴む動作が行いやすくなる」ことが挙げられます。
これは単純に薬指と小指の2本でグローブの小指の操作を行えることが大きな要因だと考えますが、その他にも小指2本入れにすると手首が小指側に傾く(手関節が尺屈する)ことで、人差し指から小指のMP関節(中手指節関節:指の付け根の関節)のラインがグローブの中で斜めから縦方向になり(下の画像で赤の線が青の線になるイメージ)、それによって掴む動作が行いやすくなると考えます。
また、通常入れではMP関節のラインが赤の線、PIP・DIP関節(近位・遠位指節間関節:指の関節で親指は1つ、人差し指~小指は2つあります。以下、IP関節)が青の線に働くことで掴む動作になりますが、小指2本入れではMP関節が青の線、IP関節が緑の線に働くことで、より立体的で深く掴めるようになっていると考えます。
〇赤の線:通常入れでのMP関節のライン
〇青の線:小指2本入れでのMP関節のライン(通常入れでのIP関節のライン)
〇緑の線:小指2本入れでのIP関節のライン
比較として、通常入れでMP関節を主として動かした場合のグローブの動き方を以下に挙げます。
これは極端な例ですが、イメージとしてはこのような動きになると思います。
※このグローブも私にはとても使いやすいグローブです。
また、ウェブ下で捕球する(強い打球を捕る)場合は、人差し指が痛くないということもメリットになると考えます。
小指2本入れのデメリット
一方、小指2本入れのデメリットとしてはウェブ下で「深く掴めてしまう」ことが挙げられます。
深く掴むことで確実に捕球できる代償として、握り替えが遅れてしまう可能性が生じてしまいます。
内野手がゴロを処理する上で捕球→握り替え→送球の流れは必須(ベアハンドキャッチを除く)になるので、握り替えが遅れてしまうことは内野手にとって致命的なデメリットになります。
私は学生時代にそう考えたため、実戦で小指2本入れをしたことはありませんでした。
しかし、そのデメリットを解消する方法を知ることができたので、次でご紹介したいと思います。
その他にもウェブ下での捕球を繰り返しているとウェブ下の革が徐々に伸びてさらに深くなってしまうというデメリットもあるようです。
これついてはグローブの使用頻度等の兼ね合いもありますが、このデメリットを解消する方法としては半折り返しの構造になっているグローブを使用する方法があると思います。
半折り返しのグローブは数が少ないのですが、小指2本入れに対応できるグローブで代表的なものとしては
ウイルソンの「86型」
になると思います。
デメリットを解消するには
デメリットを解消する方法はいたってシンプルで「捕球できる位置を増やす」という方法でした。
文字の通り、グローブの捕球できる位置を増やすということです。
具体的には、メリットでお伝えした「ウェブ下で捕球する(強い打球を捕る)」に加えて、「グローブの中指~薬指付近で捕球する」「捕球面の土手寄り(実際の手のひら)で捕球する」ことで素早い握り替えが必要な打球や送球を受けることができます。
◯ウェブ下での捕球イメージ
◯中指〜薬指付近での捕球イメージ
◯捕球面の土手寄りでの捕球イメージ
このようなイメージです。
また、別の方法としてウェブ下で捕球後、その捕球位置からグラブトスの要領でボールを数センチ浮かせるまたは転がすことで握り替えをスムーズに行う方法もあります。
反復の練習が必要にはなりますが、深くしっかり掴みつつ素早く握り替えることができる方法なので試してみる価値は充分にあると思います。
おわりに
今回、私が仕上げているグローブはウイルソンのD5という型番になります。
オーダーした当初は通常入れでの型付けを予定していましたが、自身の身体の使い方*やグローブの型付けを学ぶ過程で小指2本入れの方が適していると考えるようになりました。
*4スタンス理論におけるB1タイプ;MP関節を使った動きに適している
また、昨今の野球人の身体機能や動作パフォーマンスの向上、道具の進化による打球速度の向上に対応するためにも、内野手の小指2本入れは合理的な判断ではないかと思います。
もちろん個人の身体的特徴や動作パターン、グローブの型番(いわゆる型ではなくグローブそのものの造り)によって合う合わないは間違いなくあるため、一概に小指2本入れが良いとは言えませんが、有力な選択肢になることは確かだと思います。
私自身、小指2本入れでの実戦は数試合しか行えていませんが、今のところ手応えを感じています。
今後も実戦を通して検討を重ね、より良い情報をお伝えできればと思っています。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。